大地の子

 とある中国語の流暢な方が、数年前に、「中国語を勉強しようと思ったきっかけは、『大地の子』を見て感動したからなの。たまたま息子が第二外国語で中国語を選択したから、本ももらえたし。」と、おっしゃっていたことをずっと覚えていた。それからずっと、『大地の子』ってどんな話だろう?、と頭の片隅ではあったが気になっていた。

 それが、去年の夏頃、幸運なことに、たまたまNHKで『大地の子』の再放送がされていた。その時に、ほとんど見ることができたのだが、最初と途中の一部を見逃してしまったので、古本屋で見つけた本で読み返すことにした。『白い巨塔』が、高い視聴率を得ているこのご時世に、あえて『大地の子』を読む人も少ないだろうな、と思いつつも。本当はお正月に全部読んでしまう予定だったんだけど、全4巻は少し厳しかった。。

 と、いうわけで、『大地の子 全4巻』。

 内容はあまりに有名だけど、念のため。

 中国残留孤児として、中国人教師に育てられた陸一心(日本名:松本勝男)が、日本人であるがゆえに、恋人を失ったり、スパイの容疑にかけられ内蒙古に送られたりと、苦難の日々を強いられるが、罪をかぶせられてから五年半後、ようやく元の製鉄所に復職し、日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」建設チームに加わることができた。そこに、日本から協力会社の上海事務所長として松本耕次が派遣されてき、二人は実の父子と知らずに、プロジェクトを進めていた。

 それが、生き別れになり、三十六年ぶりに探し出した一心の妹:あつ子が、病の末、臨終したときに、偶然にも、父:松本耕次もあつ子を探してやってき、二人は実の親子である事実を知ることになる。親子関係が分かった後も、二人はプロジェクトの一員として、変わらず同じ場所で仕事をしていたが、父:松本耕次は、陸一心を日本に帰国させ、一緒に暮らすことを密かに夢見ていた。

 松本耕次が一心にそれを切り出すのは、プロジェクトが7年がかりで製鉄所の建設に成功した後に誘った三峡下りの場で、船上で、一心に「日本に帰らないか。」と切り出す。実の父のこと、妹のこと、育ての親のこと、妻子のこと…色々なことを思いめぐらせ、三峡下りの最終日に一心が出した答えが、父との惜別の意を表した、有名なこの台詞。


大地の子…」「私は、この大地の子です。」

 今まで、中国残留孤児側から書かれた本を読んだことがなかったので、残留孤児になった経緯やその後の人生、差別等を知ることができ、重い内容なのだが、割とすいすい読んでいくことができた。そして、育ての親とのやりとりや、病に冒された妹の再会の場面、父との三峡下りの場面など、ぐっと感動する場面も結構あり、読み応えのある話だった。製鉄の専門的な話は興味がないので、結構読み飛ばしたりもしてしまったが。先にドラマを見てから本を読んで、改めて思ったのだが、配役がとても合っているなぁ、ということ。それにしても、ドラマの中の上川隆也さん、どうやって、あんなにたくさんの中国語の台詞を覚えたんでしょ?