イブの歯医者

 夕方会社を抜けて、歯医者に行く。特別怖いとか、痛いとか、嫌な思い出があるわけではないが、歯医者はあまり好きではない。口を開けたままの体勢でいるのが好きじゃないから。あと、何回も通わなければならないのが面倒だから。

 治療前にアンケートを記入した。「今回どのような治療を望まれますか?」みたいな欄に、「1.今回治療が必要なところだけ治す」「2.悪いところを全て治す」のような選択肢があったので、迷わず「1.今回〜」に○をつけた。だからか、歯を一通り調べ、治療が始まるなり、「取れた詰め物ありますか?」と聞いてき、こっちも「おいおい、この詰め物をもう一回使うのかよ…。」と、疑わしい目をしつつも、「最小限の治療だもんな」と解釈し、差し出してみた。

 ところが、渡した詰め物で治療が始まるのかと思いきや、「実はね、詰め物の下で、虫歯が悪化していて、今回治療せずに詰めるだけで済ませることもできますが、次はもう神経を抜くことになりますね。半年後か一年後か・・・ま、時期については分かりませんが。どうされます?詰めます?」と、私に詰め寄ってくる。

 「今詰めるだけの楽をすると、次は半年後か一年後に、神経を抜く羽目になるんだよ。」なんて言われると、小心者なので、「はい、そうですか。では、神経を抜かれるのを待ちましょう。」とは言えず、「じゃ、治療してください。。」とお願いした。

 すると次は、「今日から治療を始めますと、年内に終わらないかもしれません。年内はその他、触りたいところがあるので、年明けてからの治療にしませんか?」と提案された。そうなると、だんだん「確かに歯石も長い間とってもらってないし、この際だからしょうがない、通うか。」という気分になってき、年末、年始と歯医者に通うことを心に決めた。


 歯医者が終わり、一旦家に寄って、また会社に戻る。みんないそいそと家に帰っていくこの日に、戻ってくる人も少ないんじゃないだろうか・・・。会社の入り口ですれ違う人にも、少し哀れがられた気がした。