一応読書の秋

久々に本を読んだ。江國香織の『神様のボート』。
私が江國香織を知ったのは、『冷静と情熱のあいだ』でなので結構最近だが、『きらきらひかる』『ホリー・ガーデン』『落下する夕方』とどれも、独特でその世界観で気に入っている。『すいかの匂い』だけは、理解が難しかったため読破できずに、実家の本棚の肥やしとなっているが。

周りに江國香織を読んでいる人も多いので、批評を書くのは少し憚られるが、感想程度に少し書いてみよう。ある母子は「かならず戻ってくる。そうして、俺はかならず葉子ちゃんを探し出す。どこにいても。」といって消えていった、パパ(母親の元旦那、こどもの父)の言葉を信じて、引っ越しを繰り返す。一途な思いを抱く傍ら、現実離れしている母:葉子だが、パパの言葉を信じる強さがどこか憎めない。一方、子どもの草子も小学生、中学生と成長していく中で、現実を目を向けたくなり、高校生になると引っ越ししても同じ学校に通えるように、自分の居場所が作れるようにと、寮生活を選ぶ。寮生活を選んだとき、居場所は作らず、引っ越しを続けていく母親を裏切ったような気持ちを抱き、辛くなる。永遠に親には追いつけないけれど、ただの思いつきで行動するのではなく、一人の意志を持った人間だと認めてもらえる瞬間、親の考えにそぐわないことをするときの裏切ったような気持ち、形は違うけれど共感できた。

そして、最後には、パパと再び巡り会えるハッピーエンドが淡々と描かれていて、すーっと気持ち良く読み終えることができた。